すべての始まり





1st プロローグ 悪魔の産声


男は一人、電気をつけていない部屋で葉巻をくわえ、外を見ていた。外は雨。本来、家族と出かける筈だったが中止になった。雨が降っていたからではない。男には、もう家族はいなかったからだ。

時を遡ること3日。

その日はよく晴れていた。日頃盛んだったテロリストによる活動は何故かぷっつりと足音を消しており、平和の象徴のような日だった。男は仕事、男の家族は買い物に出かけていた。恐らく、この後起こる恐怖と悲しみは、それを引き起こそうとする者達以外誰も予想することは出来なかっただろう。

それを引き起こした者達は活動を止めていた筈のテロリストであった。セントラルデパートを占領し、政府及び警察に仲間の解放、国外逃走用の乗り物を手配する事を要求した。しかし政府と警察は、要求をのまず、強行手段によるテロリスト殲滅を試みた。

だが、警察側にスパイがいることが発覚した時には、全てが遅すぎた。全く耳を貸していなかった者達への怒りと失望を覚えたテロリスト達はデパートにいた人質全員を殺害、当人達はデパートを爆発させ自殺。そして警察に侵入していたスパイは何処かへ消えていた。

あたりに響き渡る爆発による轟音、デパートを包む天高く舞い上がる火柱、そして数えきれない悲しみと犠牲を残して、事件は終局を迎えた。

男が人質の中に家族が居たことを知ったのはその2日後。それ以来、男の思考は完全に止まっていた。悲しみのあまり何も考えられなかった。何も考えたくなかった、そう言った方が正しいだろう。そして現在に至る。

雨は強くなっていた。男は虚ろな目で家族の写真を見る。暫くすると、男の脳裏をある二文字の言葉がかすめていった。

 粛清。

この瞬間、男の目に輝きが戻った。その輝きは心の光によるものではない。光とは全く正反対の根底に眠る闇によるものだった。ドス黒い闇の信念が心に渦巻き始め、男の心を染めていった。

「あの時、あの結末を迎えさせた全ての無能な者達に思い知らせてやる……」

 男はそうつぶやくと、立ち上がった。それと共に、雨の激しさは更に増し、雷光が舞い、雷鳴が鳴り響く。それはまるで悪魔の誕生を祝しているかのようだった。男は後に、大規模なクーデターを引き起こす。そして、こう呼ばれる事になる。


悪魔の生まれ変わり…「デビルリバース」と。



2nd 始まった日




ここは正規軍の基地。そこの廊下で話している二人の男達がいた。
一人は金髪で頭にハチマキの様なものをつけている。もう一人は黒い髪でサングラスをつけている。
「がーーッツ!また雨かよ!!」
サングラスをかけた男がうんざりした様子で言った。
「これで何日連続だろうな…。雨が降るのも、その言葉を聞くのも。」
金髪の男が言った。そして続ける。
「しかし、もう随分経つな、室内トレーニングのみってのは。雨中野外訓練もないしな。」
「ったくよ、最近室内ばかりで退屈じゃねえか?外は外でキツイけどな…」
「まあ、確かにそうだが、暇だって事は平和だって事だろ?」
「ま、そりゃそうだな。」
「しかし、雨季でもないのに随分降っているな。」
「んなことどうだっていいだろ。問題は降ってるか降ってねーかだ。」
「そういうものか…?」
「あくまで俺の理論だ。気にすんな、マルコ」
サングラスをかけた男がそう言い切ると
「それは理論と言えるか…?まあ、そういうことにしておくか。」
マルコと呼ばれた金髪の男は少々呆れ気味で答えた。
「じゃあ、そろそろ訓練の時間だ。行くか、ターマ。」
マルコがそう言うと、
「よっしゃ、行くか!」
ターマと呼ばれたサングラスをつけた男が答えた。

そして、二人は足早に廊下を歩いていった。








「しっかし、本当に平和だよな…。軍人にはちとキツイかもな…」
「それだとまるで戦争が起こるのを期待しているようだぞ…あと食べながら喋るな。」
午前の訓練が終了し、二人は食堂で昼食をとっていた。
「そういうわけじゃねえよ。平和に越した事はないだろ?しかし、テロ云々で騒いでた頃はひどかったけどな…」
ターマは食べるのを止めてそう言った。
「そうだな。そういえばいつだったか、随分世間が騒いだテロが起きたのは?」
「俺が大統領救出作戦に参加したのがすごかったか。確か、一年前だな。」ターマが言った。
「そのさらに2年前にもあったよな。セントラルデパート爆破のが。」
「あのモーデン元帥の家族が亡くなったヤツだな、確か…」
「ああ、そうだな…元帥も気の毒にな…」
少し重苦しい空気が二人を包んだが、二人の兵士のケンカの声によって、すぐに消される事になった。
「いいや!絶対違いますよ!」
若い兵士が大声で言った。それと同時にマルコとターマ、他の食堂にいた物達全員が声の出所を見る。
「てめえ、わかってねえな!?どう考えてもそうだろうが、このバカが!」
もう一人のひげの生えた兵士が負けじと大声でムキになって反論している。双方かなり熱くなっていて、どうやら収拾はつきそうにない。
「またあの二人か…今回は何が原因なんだ?」マルコが二人の近くにいた兵士に聞いた。
「あ、どうも隊長。今回は…何だっけか?」別の兵士に聞くと、
「ああ、今回はとある洗剤の半分が本当にやさしさで出来ているかどうかだそうです。」聞かれた兵士はそう答えた。
「くっだらねえ…」
ターマが呆れて言った。マルコは肩をすくめ、頭に手を当てため息をついている。他の兵士は楽しそうに、一部は不満そうに見ている。だが、そんな周りの視線もお構いなしに口論は続けられていく。
「全く、よく飽きないなあの二人は…互いの階級も何のそのだな…でもすこし羨ましいかもな…」近くにいた兵士は心の中でそう思っていた。
「いいか、耳かっぽじってよく聞きやがれ一等兵さんよ!あれのやさしさってのはな…!」
「だから何度も言ってるじゃないですか、曹長!本来そんな…!」
といった感じで、基地ではいつものように平和な日々が続いていた。笑いあい、ケンカをしたり、訓練を続ける仲間が沢山いる日々。マルコもターマも、他の兵士達もこのような日々が続くのに不満はなかった。このような状況に、自分の甘さを戒める者や、これでいいと思っている者などもいる。
しかし、一方で不穏な動きを見せている者も確かに存在した。







二人の兵士は、ある男によってある一室に呼び出しを受けていた。一人はスキンヘッドでヒゲが生えている。もう一人はこれと言った特徴は特に無く、普通と言った方がわかりやすい。
二人の兵士は、半ば緊張した面持ちで部屋に向かっていた。会話はしていない。
さて、行くか、と一人の兵士が言うと、もう一人はうなずき、失礼しますと言って部屋に入った。
そして二人の兵士を呼んだ男は、事の運びを二人に伝えた。
「元帥…今、何と…?」
一人の兵士は驚きを隠せずに言った。
「同じことは二度も言わん。早く参加予定者全員に伝えろ。」
元帥と呼ばれた男は、顔色を一切変えることなく、冷たい口調でそう言った。
「し、しかし…!」
もう一人のスキンヘッドの兵士がそう言うと、
「お前たちに口答えをされる覚えは無い。早くしろ。」
元帥と呼ばれた男がそう返す。
「わ、わかりました!」
二人の兵士は敬礼をし、すぐさま部屋を出ていった。二人は会話をしながら走っている。
「くはー…とうとうか…!しかし、本当にやるとはな!こりゃ忙しくなるぜ!」
「全くだな!」
「しかしさ、お前はいいのか?家族もちなんだろ?」
スキンヘッドの兵士に話し掛けた。
「俺は元帥についていくと決めたからな。辿り付く場所がどこであろうと!それに、家族もわかってくれるはずだ。」
「羨ましい限りだな。さあて、急ごうぜ!」
二人の兵士が出て行った部屋に、元帥と呼ばれた男がイスに座ったまま写真を見ていた。その写真には男の家族とおぼしき者達が写っている。
「あれから三年か…時間の経過とは早いものだ。」
そうつぶやいた。







そして、毎日のように平和な日々が続いていた基地では、出撃命令のサイレンと共に日常の姿を消そうとしていた。大規模な軍事クーデターが各地で発生したとの事だ。一瞬で基地内の空気が変わった。今まで談笑していた者達や、くつろいでいた者達も、表情を険しくさせながら出撃の準備に取り掛かっている。
「よし、点呼確認!総員、出撃するぞ!」
マルコが大声で言った。
「イエス、サー!」
あわただしく準備を終えた作戦参加者全員が返した。そして輸送機へと乗り込んでいった。
そして、輸送機の中では、いつもケンカをしている二人が話している。
誰がこんな事を、これほどの速さでということについてだったが、今は戦って生き延びる事を考えろと言う曹長の言葉に、一等兵はおとなしく従った。
その事は、マルコを含む全員が思っていた。輸送機の中ではエンジン音だけが聞こえた。




そして数十分後、作戦目的地に着いた全員は、先発していた部隊に合流するなり愕然とした。先発していた部隊は、既に壊滅状態になっていた上に、街が占領されたも同然の状態まで達していたからだ。マルコは混乱状態になっている先発した兵を落ち着かせ、現在の状況を聞き出し、どうするか考え始めた。
そしてすぐに考えがまとまったのか、マルコは他の兵士達をチームに分け、街に散開させた。そして自分のチームの人数を確認し、
「よし、いくぞ!」
マルコが言うと、
「よっしゃ!」
同チームのターマが返した。他のメンバーも了解、と合わせた。



正規軍側は、圧倒的に劣勢だった。相手である反乱軍は、こちらの行動をほぼすべて把握しているのに対し、こちらはまるで対応策が練られていなかったからである。
「くそ、何なんだよ一体!」
一人の兵士が攻撃を凌いでいる途中、愚痴るように言った。そして、しばらく攻撃を凌いでいると、ふと自分達の周りだけに少し暗みがかかっているのに気づいた者がいた。不思議に思い、空を見上げた。空を見上げた兵士は青ざめて
「おい!上を見ろ!!」
と叫んだ。
「何…?…ち、ちくしょうが!」
上には小型爆撃ヘリが太陽を背にして飛んでいた。撃ち落そうと正規軍兵士がバズーカを構えるが、それよりも早く爆弾が落とされる。
兵士達は逃げようとしたが、間に合わずに爆風に包まれた。そして、その後には兵士だったモノが辺り一面に散らばっていた。
このチームと無線機でやり取りしていた別のチームもまた追い詰められていた。無線機から聞こえる雑音が兵士達の絶望感をさらに煽った。
「くそったれ…!」無線機を切って兵士が言った。
「どうします、もう弾も殆んどありません!このままでは…!」
「わかっている!マルコ隊長に連絡するぞ!」無線機を使おうとした瞬間、その無線機と兵士の手に風穴が開いた。
「ぐあッ!!」兵士が手を抑えていると、建物の陰から多数の反乱軍兵が姿を見せ始めた。
「よう、正義の味方さん。遠くからの攻撃に気を取られるとはお粗末なもんだな。」
余裕の表情で銃を構えた反乱軍の兵士が言った。正規軍の兵士は既に囲まれていて、逃げ場をなくしている。
「どうする?捕虜になるなら命の保障だけはするぜ?それが嫌なら…」
言いかけた瞬間、一人の正規軍の兵士が反乱軍の兵士にナイフで斬りかかった。しかし、ナイフは空を斬り、斬りかかった兵士はすぐに撃ち殺された。
「ま、こういうわけだ。どうするよ、正義の味方さん?」
他の反乱軍の兵士は薄ら笑いを浮かべている。それは正規軍の兵士にはわかっていた。こみ上げる怒りを抑えつつ、冷静にこう言った。
「悪いが俺は断る。貴様らのような奴等に屈する気はない。」
「もったいねーな。生きてりゃ何とかなるのによ…ま、それがあんたの道なら文句は言えねーな。」
反乱軍兵士がなにやら合図を送ると、正規軍兵士を弾丸が貫いた。
「んで、あんたらはどうする?みじめに死ぬか、生きて待つか?」
残った兵士は、後者を選んだ。
「さーて、次行くぜ!もう少しでここも鎮圧できる!」反乱軍兵士は周りにいる者達にそう言うと、再び街の中に消えていった。
「畜生…畜生…!」捕虜になった兵士は、涙を流しながらそうつぶやいていた。




「状況はどうか!」
マルコが叫んだ。
「駄目です!他のチームは殆んど全滅、もしくは追い詰められています!」
若い兵士が応えた。
「ち…情けねえが戦力差がありすぎだぜ…!」
ひげの生えた兵士が誰にも聞こえないようにつぶやいた。
「くそ…チームに分けたのは間違いだったか…!」
「後悔してる暇があったらこの状況を打開する方法でも考えろ、マルコ!」
ターマがマルコに激を飛ばした。
「わかっている…!」マルコは苛立ちを隠せない様子で言った。
「とは自分で言ったものの、実際どうするよ…?次の手考えるか…?」
マルコと、生き残った兵士二人にもターマは聞いた。沈黙が返ってきた。
「ち…マジでシャレにならねえ状況だな、こりゃ…」
ひげの生えた兵士が言った。
マルコ達も追い詰められかけていた。反撃だけで手一杯になりつつある状況を、何とか打開しようと、必死で作戦を模索する。
「俺が囮になります…!」
一人の若い兵士がそう言った。
「止めとけよ、そんな無茶は。お前さん程度じゃ囮にもなれんぜ?」
ひげの生えた兵士がすぐさま返す。
「しかし、このままでは何も出来ませんよ!」
「お前が何も出来ずに死ぬだけだな。」
二人が口論をしている所に、
「この状況でケンカをしている場合か!そんな暇があったらソースでも読んでいろ!」
マルコが割って入った。
二人はしばらく睨み合った後、お互い反対の方向を向いた。そしてひげの生えた兵士が少し笑い、
「囮には俺がなるぜ。言っとくが止めても無駄だからな。」
そう言った。そしてひげの生えた兵士はハンドガンの弾を装填させ、誰かが声を掛ける隙を与えず突撃していった。 「おい、待つんだ!!」マルコが止めたが、
「止める暇があったら反撃でもしててくれよ、隊長さん!よろしく頼むぜ!なるべくまだ死にたくはねえからよ!」
銃撃の嵐の中に突っ込んでいった曹長がそう叫んだ。
「あんのアホが!」
愚痴るように言いつつも、出て来た兵士を攻撃するターマ。
「無茶なのはあなたじゃないですか、曹長…!」
一等兵も愚痴るように言った。


激しい攻防が繰り広げられていた。囮になった曹長を援護すべく、必死で銃を構え撃つマルコ達。
苦肉の策でしかなかったが、効果はかなりのものだった。しかし、周りにいる敵が全滅しかけた時曹長が突然倒れる。
「おい、どうした!?」マルコが叫んだ。
「アイツ、まさかたまに当たりやがった…!?」足をおさえて、苦しそうにしている曹長を見てターマがつぶやく。
「く…!」マルコ達が曹長に近づこうとした瞬間、
「来るんじゃねえ、皆!俺が何のために囮になったかわかんねえだろ!」曹長が叫んだ。
「ち…!」ターマは舌打ちして敵への攻撃を続けた。
「くそおッ!」一等兵はそれでも曹長に近づこうとしたが、
「アイツの言ったとおりだ…悔しいが俺たちが出たところで逆に狙撃を喰らうぞ…!それに敵は後少しだ!そいつらさえ倒せばあいつを助けられる!」マルコは歯を噛み締めて言った。
「ちっ、ここまでってヤツか…わりいな、皆…ありがとよ…」曹長が呟くと、敵の弾が曹長の眉間を貫いた。
「畜生おーッツ!」最後の敵を狙撃し終わった一等兵が叫んだ。


「…え…か…?マ…!?」
しばらくして無線機から声が出ているのにターマが気づき、マルコに応答を促した。
「こちら作戦司令部!聞こえているか、隊長!?」
「こちらマルクリウス・デニス・ロッシ。聞こえています、どうぞ。」
「現在作戦遂行中の都市は完全に制圧された!作戦は失敗だ!帰還を命ずる!」
「んだと…!?」傍らで内容を聞いていたターマがつぶやいた。
「……」マルコと一等兵はただ沈黙を続けていた。
「本部に帰還次第、本隊および作戦遂行場所の被害状況を知らせよ!以上だ!」
無線機の声が切れると、マルコは目に涙を浮かべて、黙ったまま無線機を地面に叩きつけた。
ターマは何も言わずにうつむき、一等兵は泣きじゃくっていた。



完全な敗走だった。本部に帰還したのはマルコのチームの3人だけだった。帰還出来なかった多数は捕虜に、もしくは死んだ。
司令部への被害報告を終えた3人は部屋から出ようとしたが、引き止められた。
そして、作戦総司令官から聞かされた言葉に3人は驚愕した。
「今回の軍事クーデターの首謀者はドナルド・モーデン元帥だ…」
「何…!?」「んだとぉ…!?」「そんな…!?」3人は同時に言った。
「確かな情報だ。だが、理由は本人に聞かないとわからんだろうな…政治腐敗の粛清だと一部のものは言っている。」
3人は失礼します、とだけ言って部屋を出た。







3人は食堂にいた。いつもなら賑やかなはずだが、そこには3人しかいなかった。
「何で元帥が…」
一等兵が言った。
「さあな…」
ターマが短く返す。
「やっぱり、あれが原因じゃないですか?あの時の爆破テロ…」
「そういやあれ以来結構人が変わったからな…あと最近の政治情勢にも色々と愚痴ってたらしいし…」
二人が話を進める中、マルコは沈黙したままだったが、すぐに口を開き、
「理由なんでどうでもいい…」
そうつぶやいた。
「アイツはもう俺たちの知っている元帥でもないし、尊敬の対象になるような人物でもない、ただの犯罪者だ…俺たちの仲間を奪った、ただの殺人者だ…!!」
マルコの声は次第に怒りに震えていった。
「マルコ…」
ターマが言った。
「俺はもう寝る…お前たちも寝るなら早めにしたほうがいいぞ…」
一人でマルコは部屋に戻り、つぶやく。
「モーデン…俺は絶対にお前を許さない…!」



モーデンによって引き起こされた軍事クーデターに正規軍はなす術も無く、反乱軍は次々と世界の主要都市を制圧していった。
その所要時間はわずかに170時間であった。それと同時に、正規軍はわずかに残っていた兵士達でレジスタンスを結成、反撃の機会をひたすら待つことになる。


3rd すべてを変える日




正規軍ペルグリン・ファルコンズ所属 ゲイシェンク・フロイント一等兵の日記より抜粋


  某月某日

 あのクーデターが起きてからもうずいぶん経つ。そのときから自分達は地下組織となり、ひたすら反撃の機をうかがう羽目になる。あの時たくさんの仲間を失った。思い出したくないことだ。自分の無力さを痛感した作戦だった。
なにやらずいぶん前から会議が開かれているようだが、どんな内容までかは知ることはできなかった。かなり重要なことらしい。俺のような下の人間には関係はない、ということか。


  某月某日

 先日書いた日記で会議という言葉が出たが、この会議がどんなものか一部判明。なにやら反乱軍に対抗するための兵器を開発中とのことだ。どんな兵器までかは知ることはできなかった。なんでも、これが量産の暁には反乱軍などひとたまりもない、ということだ。どっかで聞いた言葉だが…。
マルコさんたちと適当に雑談したあと、寝た。


  某月某日

 マルコさんがなにやらうろたえていた。何か「やばかった…」などとぼやいていたので何があったのか聞いてみると、何でもない、とシラをきられた。あそこまでうろたえているのは初めて見た。気になるがこれ以上問うのも失礼なので止めておくことに。
兵器についてさらに判明。どうやら小型の万能戦車、ということだ。上官たちの様子も日に日にあわただしい様子になっている。ある上官の話によるとどうやら大きな作戦が練られているらしい。反撃の日は近い、ということか。


  某月某日

 あいかわらず同じ日々だ。マルコさんとターマさんが昼食をめぐって喧嘩する以外の事以外は特に何もなかったので今日の日記は終了。


  某月某日

 モーデン軍に不穏な動きは特にない。それがおかしい、とターマさんは言っていた。確かにそうだ。最近目立った行動がまるでない。こちらの様子をうかがっているようだ。お互いにらみ合いの状態が続いている。こちらの作戦が漏れているのだろうか?そんなはずはないだろう。こちらの情報はほぼ完全に世間にはシャットアウトされている状態だ。もし情報が漏れているとしたら、スパイがいるということか…?あまり考えたくないことだ。


  某月某日

 やたらと紛争の多い、ある地域で兵器の横流しが起きていたことが判明した。出所は信じたくなかったが、正規軍であった。さらに例の万能戦車のプロトタイプが密造されているということだ。首謀者は今のところ不明。忌々しき事態と判断した正規軍は、俺達ペルグリン・ファルコンズを投入することにしたらしい。俺は情報収集を担当することに。あのときのようなことがもう起きないようにするためにも、頑張らなければならない。


  某月某日

 調査の結果、首謀者が判明。なんとヒルデガーン大佐とマクバ中佐だった。どちらも名将と言われていただけに、ショックだった。この二人に対して正規軍が下した判断は…
 「目的は物資集積施設に進入、これを破壊。同時に首謀者の身柄を拘束。」
 とのことだ。あの二人相手に拘束は困難を極めること必死だろう。はたしてどうなることやら。これから先忙しくなりそうだ。当分日記は掛けそうにないな。


  某月某日

 前の日記から随分日があいてしまった。作戦が終了した。首謀者ヒルデガーン大佐、マクバ中佐ともに死亡との事だ。しかし、マルコさんはマクバ中佐の死体が発見されなかった、と言っていた。マクバ中佐は生きている可能性があるということか…?


  某月某日

 またマルコさんとターマさんが昼食をめぐって喧嘩。結果、第三ラウンドでターマさんの右ストレートを流すようにかわし、そこからブレーンバスターを決めたマルコさんの勝利となった。勝者に与えられた食べ物はプリンだった。これについてはノーコメントとしておこう。


  某月某日

 開発中だった万能戦車、メタルスラッグが反乱軍によって奪われた。どうやらどこからか兵器工場の場所を嗅ぎつけたモーデン軍が兵器工場を襲撃、いろいろな資料とメタルスラッグを奪っていったらしい。兵器工場にいたメンバーは一名が行方不明、ほかのメンバーは全員殺されたらしい。あとで聞くと、やはりスパイがいたらしい。行方不明のメンバーがそうだった、とのことだ。
これを重く見た本部側はとうとう反撃ののろしを上げることにするらしい。たしかにメタルスラッグが奪われたらこちらの勝率は著しく下がる。もうこれ以上の猶予は許されない、というわけだ。たくさんの仲間がいまだに捕虜としてつかまっている。捕虜になってしまった皆は無事なのだろうか…俺は前作戦と同じく情報収集を担当することになった。書類をもらったので一応移しておくことにする。何だか読みづらいので一部直しておいた。


以下、これからの作戦に関する書類より一部抜粋。ゲイシェンクによる編集あり。

 今回の作戦はわが正規軍が開発中の戦車、「メタルスラッグ」の奪還作戦についての顛末である。

 このメタルスラッグ奪還作戦は少人数による編成で行う。作戦を遂行するものは以下のとおりである。

 正規軍ペルグリン・ファルコンズ(以下PF隊)所属 マルクリウス・デニス・ロッシ少尉

 以上の一名で本作戦を遂行してもらう。


いくらなんでも無茶だと思った。たった一人で反乱軍を倒すなど、はっきり言って無謀だ。しかし、もう一刻の猶予も許されないことは確かである。これを聞いたターマさんは自分の作戦参加希望を上部に申し出た。上部はこれを受理、作戦参加者が二名に増加。これでも無茶だろ…
その日のマルコさんとターマさんと俺との雑談は長くなった。


  某月某日

 作戦開始二日前。昨晩調子に乗って話しすぎた。寝不足で三人ともグロッキーモードに。


  某月某日

 作戦開始一日前。二人は最終調整に入る。俺は他の情報収集メンバーと合流。全員気のよさそうな人たちで安心した。あと一日で俺達は更なる非日常に入ることになると思うと妙な気分である。とっとと寝ることにした。明日は早い。


  某月某日

 現在朝。とうとう作戦遂行開始。マルコさん、ターマさんと挨拶を交わす。これから先当分日記は書けそうにないな。この作戦は果たして成功するのだろうか?不安だがやるしかない。これが遺書にならないように祈るか…
 さて、号令が来た。書くのも中断して、行くとしよう。今度の日記は長くなりそうだ。



男達は戦場へと足を踏み入れる。未来を自分達の手で掴むために。


TO BE CONTINUED ON METAL SLUG…






あとがき



自分が生まれて始めた書いた小説です。
今となっては恥ずかしくて見てられないものの、初めて書いた小説という事で 思い入れは全作品のなかでブッチギリで一位。
とは言いますが、一つのページに3部構成となっています。
これは実は3部ごとに区切って昔あったメタスラ小説サイト様に送らせてもらったものなのです。
ただ3部目が以上に短かったんで一つにまとめてしまえーみたいな感じで やったらこれがあら不思議、 多少なりましに見えるではありませんか。

しかし、やっぱり月日というものはアレなモノで、今と昔で文章の書き方が全然違ってるのに驚いた今日この頃。


200?年某日執筆、2005/2/5 あとがき修正



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