encounter・1st contact






ここまでくれば、大丈夫なはずだ…あいつらも追ってこないだろう。

やっとの思いで逃げられたんだ、こんなトコで絶対に死んでたまるか。俺は絶対に生き延びてみせる 。



思えば、何でこんなことになったのか。そうだ、いきなり車に詰め込まれて…それから 気が付いたら檻の中。

何かナンバーの入ったブレスレットを付けられていて…それからは思い出したく無い。

一体何人の人があんな目にあったのか…少なくとも、236人は居るんだろう。



…クソ、さっき斬られた傷の血が中々止まらない。もう疲れてきた…

いや、ダメだ!千載一遇のチャンスを手にして逃げられたんだ、絶対に逃げ延びてやる!



あ、あいつらだ…まだ追ってきていた!クソ、逃げなきゃ…














3人の男が息を潜め、汗を手で拭いながら暗がりを進んでいる。

建物の中なのだが、そこには植物がびっしりと生えている。異常気温のためか、 その成長度はすさまじいものであった。ツタの長さは短いもので10メートルほど、 太さは一番細いもので胴回り10センチほど。


そして息を潜めているのは3人の男たちだけではない。


襲撃者は突然現れる。張り巡らされたツタを自らの生まれ持った爪で切り裂き、 3人の男に襲い掛かる。その全長は人と同じか、それ以上。赤い目と硬そうな甲羅をまとっている。

「これで何回目だー!?」と一人の男が今日何度目かの悪態をついた。が、その刹那、 襲い掛かったものは縦に真っ二つに割れた。

「食っても美味そうじゃねーよな、このクソでっけー蟹…」

一人の男がそう言って日本刀を鞘にしまった。どうやらこの男が目の前に二つになった 巨大な蟹を日本刀で切り裂いたらしい。

「食べてもいいけど多分死ぬよ…さっきの吐いてきた泡見たろ?その辺のツタが一瞬で溶けて 無くなったじゃないか…」
なにやらもう突っ込むのもめんどくさいという感じでもう一人の男が言う。背はそんなに高くは 無く、逆に低くも無い。

「冗談をいう余裕があるならまだ元気な証拠ですな。まだ先は長そうじゃし、気を引き締めなされ。」
もう一人の金髪、長いひげを生やしたの少々年を取った男がそう言った。体格が非常にがっしりしている。

「へいへい…。じゃ、頑張りますかね。」








3人は任務を受けて来た。

このごろ野生生物の異常繁殖、異常成長が見られている。 そしてその異常な生物に郊外の市民が襲われたというのが 最初に警察に報告されたが、警察はもちろん相手にしなかった。

それもそのはず、その市民達は巨大な、実に人の2倍はあろうかという大きさのイナゴに襲われた、 というのだ。普通は誰も信じない。
既知のものが未知の力、姿で襲い掛かってくるなど、 本の話、ゲーム、夢でしか考えられないからである。

当初は白昼夢ということですぐに追い返した警察だが、 その報告を受けた警察も次第に顔色を真剣なものに変えていった。
目撃報告の件数、行方不明者が次第に増えて来たからである。最終的には、人を食い殺すという狂った殺人 が起こった。
事態を重く見た警察と政府は軍隊に調査を要請、そしてその任務に3人の男が選ばれたわけである。



目撃報告地点はバラバラではあるが、大体は一箇所に固まっていた。郊外の、誰も近づかないような 森の付近である。その付近に何かがあると睨んだ3人の中のリーダー格の少尉が、 その森近郊を調べるようにする、と決めた。

3人は森付近に到達し、その近くで輸送ヘリは止まってしばらく待機することにした。

「しかし、デッカイイナゴねえ…ホントにンなモンいるのかあ?」

日本刀を持った男が愚痴るように言う。

「市民からの報告は後を絶たないらしいんだ、きっといると思うよ。」

男をなだめるようにもう一人の男がそう言った。

しかし、一向に手がかりは掴めない。もう3時間近く森の付近、中をさ迷っているが、 手がかりはおろか、自分達3人の話している声以外は何一つ聞こえないのだ。

「だが、これだけ静かな森も不気味ですな…普通なら野生生物や虫の鳴き声の1つくらいしても おかしくないのじゃが…」

「そういやそうだ…おっと、そうですね、百太郎少尉。」

「ほっほ。喋り易いように喋ればよいですぞ。わしはそのほうが良いですからな。」

百太郎少尉と呼ばれた男はそういうと、

「んじゃ、お言葉に甘えて。」

刀を持った男はそう言った。そして続ける。

「でもさ、確かにおかしいな…俺達3人以外の生き物の気配がまるで無えんだ。まるで廃棄された マンションの中にいるみたいだぜ…」

「一応、警戒はしておいたほうがいいですな。市民の報告を信じてみると、突然上から襲い掛かってくる らしいですからの。」

そういって雑談していると、一人の男が大声で言う。

「ちょっと、こっちに来て見てください!」

「さっすが情報収集のエキスパート!行きますかい!」

「何があったのですかな、ゲイシェンク殿!?」

「これ…」

そういって二人に先を見ることを促した。


「はー…こいつぁエグイ…」

「むう…」

ゲイシェンクと呼ばれた男の指した指の先には、肉の塊が食べ散らかされていた。正確には肉の塊で はなく、ヒトだったものだ。
あちこちを食いちぎられ、顔は恐怖に歪んだまま。腕や足が 所々なくなっている。さらに一部は溶けてしまってよく判らなくなっている。

「背の高さと顔から見て年齢は15から20くらいですかね…失礼。」

ゲイシェンクはそういって来ている服のポケットを探る。もう一人の日本刀を持った男が指を十字架に動かした。

「アルグラルト殿、お主、仏教徒ではありませんでしたかな?」

百太郎が尋ねる。

「うんにゃ、違いますよん。別に神とかを信じるタチじゃなんだけど、何か気分的にね。」

アルグラルトと呼ばれた日本刀を持った男はそう答えた。

「あった、身分証明書。やっぱり学生だ。えーと……いいッツ!!?嘘だろ…!!?」

「は?どした?」

「ずいぶん離れた所だな…この近郊と住所がまるで一致していないんだ。」

「どれ、と…本当ですな。200キロ近くは離れていますぞ?」

「誘拐、かねえ…」

「さあ…あ、何か腕につけてるよ……えーと……何か擦れてて見辛いな…NO.0237…?」

「は?なんだそりゃ?」

「ロック式で外れないです。なんだろう…?何かの証明書代わりかなにかかな…?」

力ずくで外そうとするが、腕についたブレスレットはビクともしない。

「他には何か持っていないのですかな?」

「んー、特には…ないですね。」

「まーた振り出しかねえ…」

「そうでもなさそうだよ、アルグラルト。見てみなよ。」

そういってゲイシェンクは木を指す。そこには点々と目印になるように血の跡が付いていた。

「ちょっとエグイ目印だな…」

「全くですな…」

二人が言う。

「しかし、でっけー傷がついてんなー…どうやったらこんなモン付けれるんだ?」

アルグラルトは木についた血と、その近くにある大きな引っ掻いたような傷を見てそう言う。

「さあね…トラでもいるとか?」

「無さそうで有りそうだからなんともいえねーな…こんなホトケさんを目の当たりにしちまうと…」

「これを辿っていけば何かわかるかもしれない。行って見ましょう、百太郎さん。」

「では、そうしますか。その前にとりあえず警察に連絡するように待機メンバーに言っておきましょう。」

「よっしゃ、いっちょ行きますか!」

そういって血と爪のような物の跡をたどって3人は森の中に進んでいった。




「こちら百太郎。そちらに異常はありませんかな?」

「はい、異常なし。たった今連絡を取りました。」

待機メンバーの輸送機近くでくつろいでいた者がそう返答する。

「引き続き調査を続けます。何かあったら連絡をくれますかな。」

「了解。」

そう言って無線連絡が途切れた。待機メンバーは外でぼうっとしている。天気は快晴。
絶好の散歩日和 の筈だが、こうして調査メンバーの護送に駆り出されたため、この場を借りてくつろいでいるという 訳だ。

「しっかしさー、信じられるか?でっかいイナゴが人を襲うんだってよ。」

「バーカ、有り得ねえよ。町ぐるみでなんかそういう計画でもして町興しでもしようって魂胆じゃないか?」

「でもよお、全く違う地域でも目撃報告があったって話だぜ?」

「どうだかねえ…」

こんな感じの愚痴にも近い雑談を繰り返していた。その話している途中に、鳥が見えた。 結構な量の群れを成して飛んでいる。にしては鳴き声は聞こえず、虫のような羽音が 護送メンバーの耳の回りにちらついた。

そして、その鳥は輸送機に着実に近づいていった。





「なんかさ…妙に暑くないか…?」

「ああ…」

常識では考えられないことだが、 森の奥に進むにつれて体感温度がどんどん上昇していくのが3人にはわかった。 。さらに、その熱さは上着を着ているのが嫌になるくらいの暑さに まで達してきていた。
さらに、段段と生えている植物の種類が変わってきている。原生林に酷似したようなシダ植物、 非常に大きな大木。 まるで熱帯の密林の中にいるよ うな風景だった。そして、生き物の気配は依然として感じ取れない。

汗でまみれたシャツを気持ち悪そうに眺めて、ゲイシェンクは立ち止まった。

「おい、どした?」

アルグラルトがだれた表情で尋ねる。が、その表情はすぐに引き締まった。

「なんか…虫が飛んでるような音がしませんか…?」

3人の耳に確かに虫の羽音が聞こえる。しかし、いくら耳元を払っても、その音は止まない。 むしろ大きくなってきている。

「生き物の気配がするぜ…3人…いや、3匹、かな!」

そういってアルグラルトは上をきっと睨んだ。それにつられるように百太郎とゲイシェンクの二人が 上を見る。

「んなバカな!!?」

ゲイシェンクは信じられない表情で上を見る。百太郎もそうだった。

目撃報告がされていた巨大なイナゴが3人の目に現実のものとなって上を飛び回っている。 数は3匹。
大きさは目撃報告どおり、 ヒトの2倍はある。うるさいくらいの羽音を立てて、こちらの様子を窺っている。

しかし、その生き物は様子を見るのをやめて一瞬にしてこちらに急降下してきた。巨大な節が百太郎 を捕らえようとする。

百太郎は間一髪で交わすが、第2波が百太郎の体を捕らえる。

「むう!!」

百太郎が言うと同時に、第2波のイナゴは急に羽を失い、近くの木に激突、頭が粉々に砕けた。

百太郎も同時に叩きつけられたが、イナゴがクッションになり、怪我は無かった。

「かたじけない、アルグラルト殿!」

「御礼は後でいいからボケッとしてないで迎撃!第3波が来るぜ!!」

アルグラルトが日本刀を抜いていた。

「当たれ!!」

ゲイシェンクがハンドガンを撃つも、イナゴの生物離れした反応でかわされる。

「くっそ、速い…!!」

「ココはこれの出番ですな…!!」

そういって百太郎は鞄の中から銃を取り出す。

「せいッツ!!」

掛け声とともにその銃口からは小型のミサイルのようなものが2発発射された。2匹のイナゴはそれをかわすが、 小型のミサイルは急に進路を変え、イナゴを追う。
急な方向転換に反応できなかったイナゴにミサイルは直撃、爆発を起こした。 イナゴは体液を撒き散らしてバラバラに吹き飛ぶ。ドサドサ、っとイナゴの体の何箇所かが地面に 叩きつけられた。

「相変わらずさすがの追尾性能ですな。」

百太郎が呟く。

「お前いいトコねえなー…」

そうからかうようにいったアルグラルトに

「うるさいなあ…」

ゲイシェンクが返す。

しかし、羽音は全く止む気配が無い。むしろ増えてきている。

「ていうかさ…モノには限度ってモンがあるだろーッツ!!?」

「君の居合切りで何とかならないのか!?」

「さっき言ったとおりだっつーの!!こんなに多くちゃさすがにキツイぞ!!」

上には大量のイナゴがいた。数えるのも面倒なほどに、上を埋め尽くし、すさまじい羽音が あたり一面に鳴り響く。もはや大声でないと相手の声が聞こえないほど、イナゴは大量にいた。 もう回りは取り囲まれていて、逃げる術は無く、戦うしかなかった。

「クソ、なるべく少数弾で一気に沢山を吹き飛ばすしかないよ、これ!」

「アルグラルト殿は撃ちもらした奴を頼みますぞ!」

「ほい来たーッツ!!」

そういって3人は固まって、ゲイシェンクは鞄の中から多少の追尾性能があるロケットランチャーを取り出す。

うるさい羽音の中での死闘。 手数は相手のほうが遥かに上だが、持っている武器のおかげで何とか 凌いできた。しかし、劣勢は劣勢なため、3人は無我夢中で逃げながら敵と戦う。 最後のイナゴがロケットランチャーの爆風に巻き込まれ、燃えながら落ちて行く。

「どうやら、いなくなったみたいですね…」

「百太郎少尉、武器、残りどんくらい…?」

「今のでエネミーチェイサーは使い切ってしまいましたな…あとはマシンガンが500発、ロケットランチャー が30発、グレネードが20発ですな。」

「んじゃ、この識別信号は必要ないか。んで、今見たく素早い敵がきたらアウト、ってコトね…ヤレヤレ…」

アルグラルトはかなりうんざりした様子で言い、自分の腰についたアンテナのようなものを外した。

「そういうことになるかな…でもさっき見たく相手が固まっていれば当たるかもね…あとさ、」

そういってゲイシェンクもアンテナを外す。そして続ける。

「無我夢中で走って戦ってたから気づかなかったんだけど…あの辺りの光は何だろ…?」

ゲイシェンクが不思議そうな顔をして指を指した。

その指を指した先には確かに光がもれている。そこだけ森の木々が無いようだ。 そしてなにやら物陰が見える。
3人がそこに向かって進むと、建物の入り口らしきものが あった。入り口のシャッターは閉まっている。回りはツタや雑草でカモフラージュされているかのよ うに茂っている。明らかに人工的にツタや茂みが、入り口を覆い隠すようにしていた。

「なーんか怪しい香りがすさまじく漂ってるな、コレ…」

「取っ手が無いな…このシャッター…開くのかな…?しかしずいぶん頑丈なシャッターだなあ…多分ボタンがある筈…」

そういってゲイシェンクがボタンを探し出す。確かにシャッターは頑丈で、普通に叩いただけでは ビクともしない。シャッターというよりは、何か襲撃に備えたような鉄の壁である。

「しかし、なんだってこんな所に建物の入り口みたいなものがあるんだろ?」

「さーねぇ…新開発の土地とか?こんな新発見な 原生林があるんだから何か観光地にしようとでもして どっかの会社が作ったとか?」

「だったらこんな人工的に隠す説明がつかないよ…あ、あった。これ、かな?」

そういってゲイシェンクが見つけたボタンを押す。

扉は重々しく開いた。それと同時にすさまじい熱気が扉の奥から風となって噴きだしてきた。 その熱気の奥にはさらに階段が続いている。
中には蛍光灯が点々とついたり消えたり を繰り返している。さらに、外部を覆っていたツタは、この中にまで及んでいた。

「すっげー熱気が…この中相当熱いですよ、百太郎さん…入ってみます?」

「いえ、その前にとりあえず連絡をした方がよさそうですな。しかし…」

「その暇が今はなさそうなんだけどね…」

アルグラルトと百太郎はそう言ってアルグラルトは刀の柄に手を持っていき、百太郎は銃を手に構える。

「ウソだろ…」

ゲイシェンクが言った。

いつの間にか、回りは取り囲まれている。この建物らしき物の警備員のような者ではなく、 さっき戦ったイナゴの衆でもなかった。

蟹のような外見だ。しかし、二足で立っていて、その大きさはヒトと同じかそれ以上。
さらにはヒトの顔と同じくらいの大きさの爪。鋭利な仕上がりになっているため、 ヒトを切り裂くのはおそらく容易だろう。
そして、その蟹のような生き物は確実にこちらに 近づいてくる。

「クソ、戦うか!!?」

「いえ、相手にしていては弾が無くなりますぞ!この中に逃げこむのが得策ですな!」

そういって3人は急いで中に入り、シャッターを閉じるボタンを探す。
その間にも敵は 確実に間合いを縮めていく。

「早くしろってーの!」

「少し待っててよ!あった、これだ!!」

そういってゲイシェンクはボタンを押す。シャッターが重々しく、ゆっくりと閉まり始めた。

「く…入ってきますな!奥に逃げますぞ!」

「了解ーッツ!」

そういって3人は階段を駆け降りる。敵は…4匹ほど侵入を許してしまった。
敵の足はそんなに速くは無く、3人との距離はどんどん広って行く。しかし、ここは一方通行で、 隠れる場所も無い。
逃れる手段は敵を倒すか、ひたすら逃げ回って隠れる場所を探す、この二つ。

3人は後者を選び、とにかく階段を下りる。2分ほど駆け降りた時点でやっと階段が終わった。
しかし、通路は狭く、隠れられるような場所も存在しなかった。

「隠れられるような場所はなさそうじゃな…仕方ありませんな、迎撃準備を…」
百太郎は小声でそう言った。

3人は息を飲む。階段を下ってくる足音は確実に近づいてきた。銃を握る手にも力が入る。
汗が頬を伝う。室内の熱気を感じ取る感覚も麻痺するほどに、3人は迎撃に集中した。

そして足音の元が目の前に現れる。

「来ましたぞ!!」

3人は残っていた武器を一斉に発射した。
マシンガンの軽い発射 音から、ロケットランチャーの爆音。
狭い部屋のせいか、3人の聴覚が一瞬おかしくなる。

ロケットランチャーの煙が晴れたその先には、敵だったものが粉々に吹き飛んでいた。
回りに体液が撒き散らされ、ツタも爆風で吹き飛んでいた。

「で、どうする…外には出れそうになさげだけど…」

「とりあえず通信機で外の仲間に連絡を取りましょう。そうしない事には何も始まりませんからな。」

「…ていうか…さっきからやってるんですけど…全然応答が無いです…」

「やっぱそうなるのね…」

アルグラルトは肩を落としながらそう言った。


to be continued





あとがき

時間軸的には2(X?)と3の間の話です。
やっぱり大分昔に書いた文のせいか、見てらんないw
一応3〜4部構成の予定です。長い目で見てやってください。
マルコやターマなどの主役格が出ていないのは一応原作の設定に沿った上でのことです。
だから既にメタスラ小説ではn(ry
アルグラルト君の居合ですが、まあ百太郎が気合弾撃つような世界観の ゲームなんでまあありじゃないかなあと思って書いてみたりしました。
まあぶっちゃけ自己満足なんですが…

200?年某日執筆 2005/2/5 あとがき修正



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