encounter・2nd contact






やはり、ヤツはもとからあの方の為に研究をしていたわけではなかった…

ただ、自分の知識欲が満足させられればそれで良かったみてえだな。

ああ、ヤツは罪も無い人々を捕らえ、自分の遊び道具のように実験の材料に使っている。

全てを超える存在を作るとかマッドな事まで言ってやがるし…

このままでは我々の生命も危ういな…

利害の一致、か。仕方ない。ヤツは始末する。依存は無いか?

あるわけがねえだろう。行くぞ!!



…やはり、嫌か?

これ以上あのヤロウを放って置けば未曾有のバイオハザードが発生すんぞ。

わかっている。もう奴は俺たちの仲間じゃない。反逆者だ。

…よし、行くぞ!!












「しっかし、ずいぶん熱うござんすねえ…」

「全くだね…一体何℃あるんだか…」

汗にまみれた服を眺め、渇いた喉を潤しながらアルグラルトとゲイシェンクは言う。

「しかし、襲撃者は随分減ってきましたな…それが救いですかな…」

百太郎はそんな事は全くない、と自分の発言を心の中で否定していると、

「んなこたあーねえっすわ」「全然…」

と二人に思ったとおりの否定を受けた。
3人は未だに建物の奥深く。入ってきたところから出るのは無理だ、と判断した3人は出口を求め、 建物の中をひたすらさ迷っていた。

しかし、ツタに覆われた通路の中で、まともに入れた部屋は発見済みで10個中2つ。しかもその2つ はただの休憩室。その休憩室に何か役立つものはと探しても、ある物はただの日用雑貨品。
どうやらこの施設の混乱は随分と前から発生し始めていたらしく、 食糧の類や兵器系統のものは全く見つからず、見つかっても 中身は空であった。
しかし、そんな事は物ともせずに3人はひたすら出口を探しつづける。途中、何度も出てくる襲撃者 を蹴散らしつつ。

ふと、ゲイシェンクはツタに目をやった。ツタの奥になにやら光のようなものを感じ取ったらしい。

「アルグラルト、このツタ、何とかなるかい?何か奥に見えるんだけど…」

「コレくらいならなんともねーよ。んじゃ、ここはゲイシェンク様のお言葉にしたがい…」

そう言って、アルグラルトは刀に手をやる。
そして一呼吸置き、一瞬にしてツタを切り裂いた。

その奥にはゲイシェンクの言うとおり、光が見え、その先には通路が続いている。
そしてその更に奥、階段のようなものが見える。どうやら下に続いているようだ。

その奥には、更にツタがびっしりと茂っていた。 もう其処はかつてヒトが作ったものとは思えないほど 原始回帰をしており、奥からの熱気は最初この施設に 入ったときを凌駕するほどである。

「何か…奥から生き物の気配がするな…」

アルグラルトがそう言うと、階段の奥から何か物音がした。
何か植物のような物が地面を擦れる音、肉食動物のような唸り声。その音は着実に近づいてくる。

3人が息を飲む。

そして、それは姿を現した。大きな口を開けそこからよだれを垂らし、こちらを見据えている。 さらに、植物のような葉と茎。というよりは、植物そのものだった。
本来つぼみだと思われる物にワニのような鋭く、大量の牙が生えている。根の部分はヒトの足と同じ役割をし、 奥の階段からすさまじい速度で上がってくる。

「ていうか…何でもありだなあ、ココ…ってうわッツ!!」

ゲイシェンクがそう言っているうちにその植物は襲い掛かってきた。こちらを 食い殺そうと大きな口をこちらに向ける。ゲイシェンクは間一髪で何とかかわし、その口は 後ろのツタを噛む。

「オイオイ…シャレになってねえぞ!」

植物は一瞬にしてツタを噛み切った。その後には何も残っていない。更に休むまもなく、こちらに向 かって来る。
3人は一瞬の判断から、左右に分かれた通路に逃げた。一人、ゲイシェンクだけが逆に。

「何やってんだよ!早くコッチに来いって!!」

アルグラルトの叫びもむなしく、その言葉を言う一瞬で2人と一人の間は怪物で埋め尽くされた。 それでも構わず、アルグラルトは中に突っ込もうとする。

「あきらめなさい!わしたちもやられてしまいますぞ!」

百太郎がアルグラルトの腕を強引に引っ張ってそう言った。

「だからってダチを見捨てるのかよ!!俺にはそんなことは出来ねえ!」

アルグラルトは怒りをあらわにし、百太郎に反論する。

「良いんだ!早く逃げてくれ!あとで絶対合流する!!」

その会話を見透かすように、ゲイシェンクは反対側から叫ぶ。

と言ってる間にも、怪物たちは確実に間合いを詰めてくる。

「や、やばい…速くどこかに!!」

そう言って、3人は逃げ始めた。
一人取り残されたゲイシェンクは焦りからか、恐怖からか、それとも両方からか。わき目も降らず、必死に逃げる。 とにかく落ち着こうと深呼吸をしながら、怪物との間合いを離したゲイシェンクは辺りを見回す。

最初に目についたのは非常用シャッター。だが、作動ボタンにツタが絡み付いているせいで ボタンを押すことは出来ない。

しかし、非常用シャッターの近くに部屋を見つけた。ツタは絡み付いてなく、 何故か人工的に焼き切ったような跡があったが、そんなことを気にしている暇は ゲイシェンクにはなかった。植物の怪物はもう目前まで迫っている。

「イチかバチか…!!」

ボタンを押すと、すぐ隣にあったドアが開く。

ゲイシェンクはそこに無心で飛び込みドアを閉め、完全にロックをかけた。




「そらよっと!!」

襲い掛かってきた植物の化物の最後の一匹をアルグラルトは斬り殺した。

統率部分の頭を失った植物は急速に枯れていき、後には何も残らなかった。

「さて、と…非常用シャッターを閉じてしまっては戻ることは出来ませんな…」

「…アイツは大丈夫だ。そう言ったからな。もし嘘ついて死んでやがったら殺してやる…」

「ほっほっほ。意味がわかりませんぞ。」

そういった百太郎にアルグラルトは少し笑って返した。

「へ…さてと、出口見つけるにはもう奥に進むしか無さそうだな…もう何でも来いだぜ。」

「頼もしいですな。それでは行きましょうか。」

そういって二人は非常灯のみがついた、熱気のこもった通路を進んでいった。





「ふう…どうやら正解、と…」

回りを見て転がった、中身が殆ど空になっている 武器以外何も見当たらなかったゲイシェンクは安堵しきった表情で溜息を つき、そう言った。

回りを見てみるとどうやら倉庫らしく、マシンガンや薬莢、ナイフやガソリンなど、 色々な重火器や非常用の食糧らしき缶詰、備品などがあたり一面に転がっている。

「随分な散らかりようだなあ…ココで何があったんだろう…」

ゲイシェンクは役に立ちそうなものは無いかと、辺りを漁る。

「しかし、どうしようなあ…出口は入ってきたところしかないっぽいし、外に出ればアレが居るだろうしなあ…」

そう言いながら役に立つものは無いか探しつづけていた。

そうしてしばらく部屋の探索をしていた時。

「…ぅ…」

ゲイシェンクははっとして周りを見る。しかし、彼の視界には誰も居ない。

空耳か、と思ってまた部屋の探索を続けるが、

「…す…て……れ…」

今度は空耳ではないと思ったゲイシェンクは声の出所を探す。

「…ここ…だ……」

「だ、大丈夫かい!!?」

そういって声の主に駆け寄るゲイシェンクは声の主の体を見て愕然とした。
服はボロボロにちぎれ、一部は溶けてしまっている。さらには左腕がなくなっており、 顔色も土気色をしている。

「君は…正規軍か…」

もう一人の怪我をあまりしていない兵士らしき男が険しい顔をし、ゲイシェンクを睨みながらそう言った。

「今は…そんなことを…言っ…てる…ぐッ…!!」

「お、おい、喋るんじゃない!!」

一人の怪我をしている男が咽ながら、血を吐きならがそう言った。

「け、怪我の手当てを!!」

ゲイシェンクがそう言って自分のポケットを探る。が、

「待て…どの道俺はも…う助からな…い…」

「あきらめんじゃない!!」

「いや、もう痛み…すら感じなくなった…こうなったらもう手遅れ…なのはお前…もよくわかっているだろう…」

「…ッ!!」

怪我をしている男はゲイシェンクともう一人の男に言う。

「俺…たちとお前た…ちは敵同…士かもしれないが…今はそん…なことを言っている場合では無い…」

そして続ける。

「いいか…ココから協力し…て生きて出て…世界に、伝えるんだ…今は…反乱軍がどうだと言っている 場合では無いことを…このまま…彼らを放って置けば…世界が…」

そう言って息絶えた。

一人の兵士は近くにあったコンテナを蹴った。ゲイシェンクは黙祷をしている。
しばらくの沈黙が続いたあと、一人の兵士が口を開く。

「君…名前は何だ?おっと、モノを聞く場合こっちから名乗るのが礼儀って奴かな…」

「いや、構わないよ。俺の名前はゲイシェンク・フロイント。まあ、見てのとおり正規軍さ。」

「ゲイシェンク、か。俺の名はライアンだ。ライアン・ブリューゲル。説明は要らないな。」

「反乱軍、だね。」

「そういうことだ。」

「君は、この施設に何か関わりがあるのかい?」

「無かったらこんなトコに居ないさ…何から説明するか…うーん…」

「とりあえず、何でこんな所にこんな施設があるのか、どうしてこんなことになったのか説明 してくれるかな…?」

「ああ、それが妥当ってヤツか…」







一方百太郎とアルグラルトたち…

「…おいおい、何だココ…」

「何か、あったようですな…」

MAIN LABORATORYと書かれた扉の中の広い部屋。

割れたカプセルの近くで横たわっているヒト、では無く何か別の生き物が融合したようなモノ。

破られたカプセルとその破片。

異常な室温と腐臭。

巨大なコンピュータ。

あたり一面に散らばった資料。

膨大な量の木の根。

そして、あたり一面に倒れている人の死体。

さらには、何の生き物かわからない死体まである。

人の血らしきものがあたり一面、壁や床、ツタ、果ては天井までこびり付いている。

「まさに地獄絵図と呼ぶのにふさわしい光景ですな…」

「ち…胸クソ悪くなるぜ…」

指を十字に動かしてそう言ったアルグラルトは ツタが絡んでいる巨大なコンピュータに近づき、いろいろと触り始めた。

「こっから何か情報引き出せるといいんだけどな…」

「出来ますかな?」

「んー、パソコンなんて滅多に使わねーし普段インターネットとかにしか使わねーからなあ…やれるだけやってみますかね…」

そして、30分後。

「ダメだ、全然わかんねえ。パスワードでロックされてやがる。」

「ふむ…こんなときマルコ殿が居てくれればのう…」

「いない人のこと言ったってしゃあねえってば。それに反乱軍の残党狩りに忙しくて こんな一般兵が受ける任務を任されねえって。」

その後に実際は特務部隊でも生き残れるかわからない任務だったけどな、と付け足した。

「それもそうですな。そういえば無線は回復しましたかな?」

「全ッ然ダメダメのダメ。ダメの極み。電波妨害受けてんのか待機チームに何かあったか…繋がんねえ。」

「いや、そうでなくてゲイシェンク殿にですぞ。彼なら何かわかるかも知れませんしな。」

「あー、そうだな。…生きててくれよ。」

そう言って、アルグラルトは祈るように無線にスイッチを入れる。

「こちらアルグラルト…」





「し…信じられない…」

ゲイシェンクは驚きを隠せずに言った。

「だがな…事実だ。あんな状況で嘘をつくとは思えないし、その事について心当たりが あるし、確実な証拠もつかんだ。」

「しかし、そんなことが…もし本当だとしたらとんでもない事になるんじゃ…」

「もうなっている…状況を見ればわかるだろう?」

「た、確かに…それで君たちは…」

「ああ…だが、ご覧のとおりだ。クソ…俺が今まで信じてきたものは何なんだろう…」

ライアンは落胆しながらそう言った。

ゲイシェンクは何も言えずにただ立っていた。

「…って今は愚痴ってる場合じゃないな。とりあえずココの倉庫には別の出口があるからそこから出て 何とか脱出、んで、この事実を伝えないと…」

「州どころか国規模の問題では無くなる、って話だね…」

「そうだ。この際敵味方がどうだとか言ってはいられない。協力してくれるな?」

「勿論さ。じゃあ、宜しく頼むよ。」

そう言ってゲイシェンクとライアンは握手をし、そしてそのすぐに無線からなにやら雑音が聞こえた。
「おーい、生きてたら返事してくれー。」

「ああ、こちらゲイシェンク。どうかしたの?」

「おお!繋がった!つーか生きてたか!!ふう…安心したぜ!ていうかどうかしたのじゃねえ!! 生きてたならさっさと連絡入れろってのこの馬鹿ヤロウ!!」

安堵と怒りの両方が混ざった声が大声で無線から発生し、その大声は部屋中に響き渡った。

「わ、悪かったよ…」
ゲイシェンクとライアンはあまりもの声の大きさに頭を抱えてうずくまっていた。

「ふん!…おっと、本題忘れるところだった。今メインのラボに居るんだけどさ、 ちょっと聞きたいことが…」




「わかった、今から行くよ。ただ、ちょっと時間かかりそうだからさ、ちょっと待っててくれ。」

「へーい、りょーかーい。」






to be continued






あとがき

さてさてセカンドコンタクト。
コレはファーストの4ヶ月くらい後に書き終わりました(死
一応話の筋としては頭の中で構想済みなんですが、いかんせんその構想が 大雑把なせいと本人のやる気と文才により2年近く凍結してるワケですね(死んでしまえ
とりあえずサモ小説は置いといてこっちを完結させたいなあとか思ったり。
頑張ろう。
ちなみにencounterシリーズは今は閉鎖中の某サイト様に送らせてもらったものなんですが、 今この小説を見てみると迷惑以外の何者でもないですね(ぉ

執筆 200?年某日 2005/2/5あとがき修正




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