二人の距離




ある日の事だ。
とりあえず少し暇になったので島の中を散歩しようと思ってぶらついていた時か。

で、霊界集落をまわっていたら女連中が群がっていて。
中には違うのも混ざってはいたが。
何かやっているのかと思って近づいてみたら。



それが運の尽きだったか…



何で私が質問攻めに遭わねばならぬのだ…

…ん?私の学生の頃か?
この前話したとおりだろう。
弟のため、家名を落とさぬため、ただそれだけのためにがむしゃらに走りつづけた。

「そうじゃなくて!学生の頃のお二人の関係はどんな感じだったんですか?」

いきなり何を言い出すんだこの娘は。
というか対象は誰だ。…何、レックスだと?

「あー、そうだそうだ!気になるよね〜ファリエル!で、どんな感じだったの、アズリア?」

何を期待しているんだこの娘達は。
というかまだそんなことに答えるなんて私は返事をした覚えは…

「…」

頼むからそんな目で見るのは止めてくれ…

「だったら!観念して話してよ〜」

2人同時で言うな。
しかしなんて息の合った攻撃だ…頭が痛くなってくる。

「で!告白とかはしたんですか?」

するか!大体私はレックスの事が好きだと一言も言ってないし、それに…

「解りやすいね〜アズリアは。顔真っ赤だし。そもそも気付いてないの先生くらいだと思うけど?」

ぐ…

「あらら、カマかけたら当たっちゃった見たいねえ〜。」

うるさい女男。む?そこ!「してやったり!」って顔をするな!

「さあて、観念時みたいね。…話してもらうわよ?」

本気か…お前は引止め役だと思っていたのに…

「本気も本気、大真面目のつもりだけど?それに興味ある話にはとことん突っかかる気だったけど、私は?」

…仕方ない。話すか…
…何故楽しそうに拍手をする?



知り合った時は…レックスもお前達に話したか。
軍学校最初の試験で首席がレックスで次点が私だった。
といっても本当は同点だったがな。
それからだな。

第一印象はこんな考えの甘いのほほんとした男に首席を取られたと思うと腹が立って仕方が 無かったか。
だがその考えもすぐに改められたな。
レックスにはレックスの意志があった。私と同じようにな。

いつもニヤけていてボーっとしてるくせにやることはやっていたし。

まあそれからは色々と話すようになったな。
というか私が一方的に話しかけてただけだが。

…は?違う!そう言うのじゃない!
成績云々やら説教やらだ!
…ええい、くそ。何故か顔が熱くなる…

「色々と話し掛けたり説教したりするのはやっぱり気になるからじゃなかったの〜?」

…違うと言っているだろうが。蹴るぞ。
何?顔が赤くなっている状態で否定されても説得力がないだと?
…事実だが無性に腹が立つからあとで蹴っておこう。

…まあ、段々と気になりはじめたのは、…認めよう。
む、言ってる事が矛盾している…
ん、何故にやけているのだお前ら。

まあレックスには色々と付き合ってもらったな。
特訓だ特訓!
大体、その頃の私は帝国軍人になろうと必死だったんだ…
その時の私にはそんなこと…できるはず無かった。

だから、気持ちは抑えていた。
どれだけレックスの笑顔に惹かれようと、レックスの優しさに触れようと。

「でも、その溢れてくる気持ちを抑えきれなくて、結局…」

とりあえず殴っておこう。
あ、元々幽霊だから殴れないか。くそ。

私とレックスの距離は、縮まることは無かったな。
ただの学友。それだけの関係だ。
そもそも、それを望んだのは私でもある。
理由?先ほど話したはずだが。
そもそもレックスはそう言う話に鈍いはずから気付きはしないだろう。

…だが、どこかでその距離が縮むことを望んでいたのかもしれないな。
お前の言うとおり、思いが溢れてくる事もあった。
レックスの優しさにもっと触れたいと思ったこともあった…かもしれない。

だからにやけるな。

でも、それを抑えたのは…やはり、現状が現状だったから、か。

「で、も。今だったら貴方を縛るものがないわよねぇ〜?」

何だその目は。何を期待している…

「ダメですよ。イスラが居るんですから。でもそれが二人の掛け橋となって…」

何をうっとりした目をして自分の世界に入り込んでいるんだ、この娘は…
と、とにかくだ!
もう十分だろう!私は戻るからな!

「あ、逃げる気ね!待ちなさい!」
「いーじゃないのー!女同士でしか話せないこともあるでしょー!ぶーぶー!」

もう私には何も聞こえないことにした。走って逃げよう。
早く帰っておかないと後々どんな展開にされるか解ったものではない…
あ、ソノラを蹴り忘れた…まあいい、今度にしよう。



「ああ、いたいた。おーい、アズリアー」

レックスか。何だ?

「いや、何処にも居なかったからさ。何処に行ったのかなー、って思って」

探していたわけか。すまないな。
何をしていたか、だって?
頼むからそれだけは聞かないでくれ。思い出すと頭が痛くなるから。

「ん、解った…それじゃ、戻ろうか。イスラが待ってるだろうし」

そう言ってレックスが見せるのはいつもの笑顔。
私が最も惹かれるもの。
やっぱり、この笑顔は苦手だ…自分がなにやら変になるのが解る。

「どうしたんだい?早く行こう」

ん、何だその手は?

まあ、たまには、悪くない、かな…?
そう思って私の手を重ねる。私の手を包んだレックスの手は暖かかった。

「――――」

…ん?何だ?すまない…ぼっとしていて聞いてなかった。
…元凶はお前だが。
聞いてないなら別にそれでもいい?
…多少気になるが…まあ、いいか。



学生の頃に比べれば、少しは縮まった…のだろうか?
私たちの距離は?

なあ、レックス―――――



End

あとがき

一人のキャラの視点の小説ってのが一回書いてみたくて書いたもの。
そしたらこうなりました。切腹。顔から火が出そうです。
まああれです、ぶっちゃけ適当なワケです。
とはいってもこういのって非常に書きやすいキャラと非常に書きにくいキャラの 二極に極端に分かれるかなーってのが個人的な意見。
とりあえず構想だけしてしばらくしてから書き始めたらこれがまあスラスラかけるんでビックリしました。
話の全体は1時間もかかってません。故に適当。
んで調子に乗ってもう一個別のキャラで書こうとしたら全然書けねーでやがる。
1時間以上かけて3行です。無論放り出しました。(おい



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