エリの散歩道々中

「エリさん、どっか行くんですか?」

別にどことも。

「また散歩ですか。好きですねー」

まー趣味っつかな。

「おみやげ買ってきて下さいね」

何でだよ。やだよ

「ああっ行ってらっしゃい」


さあ今日はどこへ行こうかしらね。
来た当初はなーんにも分からんかったが、
今では半径10キロ以内なら訳はない。
もっとも、目標は無いので、そんな知識も
必要ないな。

「エリさーん」

またフィオかよ。

「今日は寒くなりますよ。コートでも持って行くといいですよ」

ああサンキュ。

「でも着て行った方がもっと良いと思いますよ」

持って行く=着て行くと考えないのかお前は。

「そう言えばマルコさん達知りませんか?」

何だいきなり。

「だーれもいないんですよ。私1人しか」

あ、そ!もう行くから。

「やっぱりエリさん行かないでー私1人だと寂しいー」

だったらお前も誰か捜しに出ればいいじゃん。

「そうかそうしよう。エリさん一緒に行」

別行動な。じゃ!


公園だ。
ここはよくカップルとかがいちゃつきにやってくる。
まったく子供の遊び場だろうが。大人は大人らしくなーー、ん!
あれは、ターマだわね。誰かと一緒にいるぞ。女だ!

「ターマさぁーん。ごろにゃーん」

「・・・ん」

「ターマさぁーん。ヒヒーン」

「・・・ん」

「ターマさぁーん。ぐわおおおおおおおぉぉぉぉぉぁぉぉ!」

「・・・んん」

「どうですかね!私のレパートリー大体こんなもんですけど」

「いやまぁ、うーん。俺にゃよく分かんねぇ」

「もっと真面目に見て下さいよ」

「えとな、何で俺に見せるわけ?」

「別に誰にでもOKですが」

「えとさ、じゃ、まどかに見てもらやいいだろ」

「姉さんは今病院なのです。検査しに」

「何で公園でやる必要があんだ?」

「外でやる事に意義がある!」

「で、留美。お前のやってるのは結局どういう事なんだ?」

「いや、特になんにも?」

「お前、バカか」

何やってんだあの2人。
触ると怪我するな、
ほってこう。

「ん?エリじゃないかあれ」

「エリさん?」

逃げよ。


商店街かー。
何も買うもんねーしなー、ん?
マルコとトレバーがいるじゃん。

「マルコさーん。やっぱジャンクものっすよー」

「えー。ちゃんとした物がよくないか?」

「ダメっすよ。やっぱジャンクものに尽きます」

「金はあんだから、ケチる事もないだろ」

「ケチとか、んなんじゃなくて!」

「とりあえず、もうちっと色々見てみようぜ」

「まぁ、いいでしょう。分かったっす。あ!」

「どうした」

「これ!これなんかサイコーすよ。格好いいなあ」

「あーこれがジャンクものって訳ですか」

「なっマルコさんジャンクものが何かも分からずに言ってたんっすか」

「いや、な、て言うか、な」

「もう!頼みますよ。今日はマルコさんのセンスに頼ってんっすから」

「だってお前、服のジャンクものっつわれても。要するに穴あきかよ」

「こういうのが、いいんっすよ」

「中古じゃん。やめやめ」

「買ーいましょうよー」

「俺のセンスに頼ってっつったのに・・・」

あいつらは、そう言えば服が欲しいってたな。
私は、別に困るほど少ないって訳でないしな。
果たして何を買うもんやら。

って、思ってたら、
ショップウィンドウ眺めてる私がいるでやんの。
あー、こういう服は嫌いじゃないわね。

あ、れ!このマネキン、そっくりさんだなー。

「あっれーエリちゃんだわ」

うわ、マネキンが喋った。・・・・・・ナディア何やってんだ。

「仕事だよー、と言うかはアルバイト?動くマネキンさ」

動くマネキンってのは、服を着て町中を歩く事を言うんじゃねーの?

「細かい事は気にしない。気にしない」

あんた金に困ってたっけ。

「いんや、この服が欲しかったのさ」

じゃ買えよ。

「この仕事が終わったらこれもらえるのよ。どうせなら無料の方がねー」

よくこの仕事させてもらえたな。

「何言ってんの。こう見えてもモデルなのだわよ。お店の人も喜んでくれたさ」

ま、いいけど。

「あと1時間ぐらいで終わるんだけど、エリちゃん待っててよ」

やだよ。じゃな

「ああっ薄情者ーーー」

外は寒いって事を、後であいつに教えてやろう。
しかし、1週間前の太ったナディアの写真を店に見せたらどんな反応するのかしらね。
どーでもいいや。
そんな写真もねーし。


「元帥ー。1回帰りましょう」

「こんなとこで元帥って呼ぶなって!」

「でも呼び捨てなんてできません」

「さん付けがあるだろ」

「とにかくモーデンさん。もうこれ以上は持てません」

「オニール君ならまだまだいけるはずだ」

「いや、本人が無理って言ってるのに」

「あと2,3軒で終わりなのに。しょうがないなー」

「すいませんね」

「オニール君、君、階級下がっても文句言うなよ」

「いいですよ。中ボスとして出ませんけどね」

「ごめんなさい」

今のはモーデン?
奴らも町に出てくるのか。初めて見たわ。
しかし、バカだったなー。

よもや、マーズピープルまでも出てこやしねだろな。

・・・・・・・・・・・・

うわ、
あの女はいいとして、その隣の布で隠された人影はもしかして。人影か?

「大丈夫よ。あなたが宇宙人ってバレてないからね」

足が見えてる足が見えてる。

「・・・ん?うん。一緒にコーヒー飲もうね」

テレパシーで会話?っつかカップル!?

「おかしいな。モーデン元帥達先に着てる手はずなのに」

待ち合わせしてんのか。
しかしマーズピープルが街中にいるとなると、
周りが混乱してしまう。
しゃーね、教えてやるか。

「ええ、そうなんですか。きっとその人は私達が待ってる人だと思います」

とりあえず帰ったみたいだからあんた達も行けば?

「そうします。ありがとうございます。さ、行きましょ」

しかし、マーズピープルは連れてくるなよ。
布で隠してまでする事じゃないと思うわ。


あ、マルコとトレバーがまたいたよ。

「いやーここのラーメン屋おいしいって評判らしいんっすよ」

「客が・・・」

「服もいいの見つかったし、このラーメン屋も運良く行列少なめっすからね」

「まだか・・・」

「いやー本当はもっと混んでるらしいんっすよ」

「客が・・・」

「おーい、マルコさーん」

「まだか・・・」

「ほら、あと3,4人後っすよ」

「うおーーまだかーー並んでんじゃねーーーーーぞーーーーー!!」

「うわーご乱心だー」

勝手にやってろよ。
マルコはもうちょっと辛抱が必要だわね。


病院だ。
そう言えば、
公園で留美が姉さんは病院だとか何とかかんとか。

ったら来たよ。留美。
ターマがいないわどこいったのかしらね。

「あ、留美。迎えに来たの?」

「やあ姉さん。どうだった?」

「何が?」

「検査」

「うん・・・それがね・・・」

「えっ!何よその意味深な顔は。大変だーーー」

「なーんとも無かったわ。ってあれ?」

「早く!もっといい医者を!とりあえずマルコさんに報告だ!」

「あ!ちょっ待ちなさい。留美ーー」

まあ、相変わらずの姉妹といったところだわね。


「やあ、エリ殿ではないですか」

誰だ?

「・・・・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・・・・

「あの、わし、百太郎」

あ。ごめん。

「服着てたから分からなかったのですかな」

まるで普段は服を着てない変態みたいな言い方だわね。

「違いありませんな。ほっほっほ。ではわしは寄る所があるのでこの辺で」

大らかな人だ。すごいわね。皆も彼を見習うべきなんだ。


あれはターマだわ。
ナディアマネキンの前で突っ立って、
何か話してるのか?

「これ、ナディアそっくりだよなぁ」

「・・・・・・・・・・・・」

「そっくりではなくて、実はナディア本人でしたー。なんてな」

「・・・・・・・・・・・・」

「いや、でも似てるな、実によく似てる」

「・・・・・・・・・・・・」

ナディア、何でターマにはあかさないのかしらね。
からかわれると思ってんのか?
ま、関係ねーや。

・・・・・・・・・

ナディア、ずっと私を見てるわね。

「・・・!・・・!・・・!・・・」

ほっぽって行ったことを怒ってるのか?

「・・・!・・・!・・・!・・・」

はっはっは。ターマがいるから何もできないでいるわ。

「・・・!・・・!・・・!・・・」

ま、もうすぐ1時間経つし、
外は思ってるより寒いって事にじきに気づくわ。
そうね。手ぐらいは振ってやろう。

「・・・!・・・!・・・!・・・」


夕刻、

帰ってきたわね。今日はなんか、いろいろあったな。

「よーエリじゃねーか。そういやお前今日公園の前歩かなかった?」

知らないわ。

「そう言えばさっきナディアそっくりのマネキンがあってなー。珍しいな」

本当にそうなら珍しいわね。

「いや本当にあったんだって。信じろよ」

そういう事じゃなくてね。まいいか。

「なんだ?変なやつ」

マルコとトレバーも帰ってきたわ。

「やーエリさん。お疲れ様っす」

マルコ、様子が変よ。どうしたの。

「いやー行列のある店に並んだらマルコさんいきなり暴れ出して、 しまいには酔拳のマネなんてしだして大変だったっすよー」

くそ、そこは見てなかったわ。

「って、え?エリさんいたんっすか」

何でもない。ま、マルコ安静にさせてたらいいんじゃない?

「そうします。マルコさん行きましょう」

あの遠くに見える人影はナディアだわ。服もしっかり持ってるわね。

「やーエリちゃん。外は寒いねーー知らなかった」

そんな所で1時間も待ってろっつったのはどこのどいつだよ。

「いやーはははごめんごめん。お詫びに余分に貰った服あげるから」

お、サンキュ、もうけ。

「あのさ、ターマさん何か言ってた?」

は、何で?あそうか、ターマずっとあんた見てたね。

「うん。で何て?」

いんや何も。珍しがってたぐらいか。

「そう、良かった」

何故に?

「なーんかバレたらオゴられそうだもんよ。別に嫌ってことは ないんだけどねぇー何だか」

ターマも大変だ。

「姉さんが大変でぇーーーーーーす!」

留美だわ。あの娘ずっと走ってたのか?

「あ!エリさん。大変です姉さんが!姉さんがぁっ!!」

いいから、ちょっと止まれ。

「なんですか?」

後ろを見ろ。

「後ろ?あ、姉さんだ」

そして落ち着いて彼女の話でも聞きな。

「もう留美!待ってっていったのに」

「そうなの?いやー聞こえなかった。ごめんよ姉さん」

「私はなんともないのよ?勘違いしたでしょ」

「えーそうなの?だって深刻な顔してたんだもんよ」

「そりゃー・・・ちょっとからかおうとはしたけど。この場合、私が悪いの?」

「いやーそんなことないさ。まま、姉さん入りましょう入りましょう」

ま、相変わらずの姉妹といったところだわね。


「おい!フィオ!どうしたんだ」

フィオ?中にいるのか。出たんじゃなかったのか?

「うわああああーーーーーーん。あ、エリさん!」

何だお前何号泣してんだ。

「ずーっと私1人だったんですよおーーー」

捜しに出ればって言ったよな。

「そうしようと思ったんですけど。出られなかったんですよーーー」

何でだよ。

「見つからないんですよーーー」

何がだよ。

「私のコートが。どこにいったのかーーーーってあれ!エリさん」

あ、私の今着てるコート、お前のだったのか。

「ひっひどい!エリさん!ひどいわ!」

お前が、私に渡したコートだろ。

「そうでしたっけ」

うわ。天然?

「何だ?どうしたんだ」

何でもないよ。マルコ、落ち着いたか。

「まーでも今こうして皆さんがいるからいいです」

フィオ、お前は切り替えがはえーーな。
 


<おわり>


<あとがき>タスラグより

何の変哲もない、しまりが全くないメリハリつかない作品です。
中途半端というか何でもないようなものを作ってみたかった。
それはつまり面白くないということではないのか?

この作品と前回の古劇なめくじ記は、
現在製作中のとある作品が出来る中継ぎみたいな感じです。
なかなか手が進まずにこういった逃げ道を作っています。
しかし中継ぎに2作も作ってしまうとは、遅すぎるな。
だからと言ってこの2作に手を抜いている訳ではないのであしからず。
逆に言えばこれが全快ですという事に。
前回作完成時に問題の作品の完成度2割、今回完成時に7割出来ているので、
まったく手付かずという訳ではなさそうです。
そんな感じで。

こんな散歩ができたらさぞ楽しいだろうと思いつつ。
 




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