またね


ちっくしょう、ターマどこ行きやがった。
あんなもん見せやがってー!
絶対1回思いっきりぶん殴ってやるからな。

よもや、家の中に隠れたって事は無いだろうな。
・・・。
いやいや、いくら野郎でもそんな非常識な事はせんだろう。
もししてたら、それこそ はっ倒すけどな。戦争を何だと心得てるんだって感じで。

女性を発見した。
いや、微妙だが、女の子かな?
戦場跡とは言え、こんなとこで何してんだ。
危ないぞ。

ポン、と、彼女の肩を叩く。
ノオオオオオオオオ!
ズザーーー
思いっきり驚く少女。
な、何だ何だ。何驚いてる?
はっ!
違うぞ。俺はそんなんじゃないからな!

マルコォー!
と言ってその少女にいきなり胸ぐら掴まれた。
今度は俺がびっくりした。

おおおなんだお前ロリコンだったのかーと、
ターマがどこからともなく出てきた。
タイミング悪いなお前。
今ゴチャゴチャするから、ちょっと黙ってろ。

その少女はとても怒っていた。
エリはどこだと、いきりたっている。
エリって、誰だ?おいターマは知ってるか?

ターマもどうやら知らないらしい。
なんだ、お前のひっかけた女かなーとか思ったんだけどなー。
今までずっとからかわれっぱなしだったので、俺もちょっとからかってやった。
無視されたけどな。

その少女は良い奴だったよ。
人を殺すという事に滅茶苦茶怒ってた。
こりゃ俺達が嫌われるのも無理はないな。
ターマも女に嫌われて残念だったなー。
また無視されたけどな。

その後ターマがからかったせいで少女と大乱闘になったが、
それが幸をそうしたのか、幾分すっきりしたらしく、
俺達の事も、許しまではしなかったが、どうやら認めてくれたようだ。
ターマ、女に認められて良かったなー。
こういうの、イタチごっこって言うのか?

少女と別れた。
かなり元気者だったので、こっちもちょっと元気が出てきた。
また会いたいもんだなとターマに言ったら、
やっぱりロリコンだからか?と言われた。
しまった。墓穴掘っちまった。


つまり、私は死んでも構わねぇって事だな?そう言ってんだろ?

マルコ達が活躍した前大戦から2年、
またしょうこりもなく戦争をおっぱじめた。
誰が起こしたかなんて関係ねーよ。
要は自分さえ良けりゃいいんだよ。この世の奴らはな。

「そんな事言ってないだろう。エリの能力を見込んで、頼んでるんだろ」
名前で呼ぶなっつんだ。気色悪ぃ。
「エリさんなら、絶対できますよ」
こいつは・・・特にウゼくせぇ。メガネの辺りがウゼくせぇ。

ドス。
「痛い!」
あ、やっぱりうぜぇ。
メガネを突いてやろうと思ったら、中途半端に避けやがって、
しかもメガネが半分ズレてるもんだから、
私の指がフィオのまぶたに直通した。

「エリ、ダメだろそりゃー。フィオはまぁ、アレなんだから」
「マルコさんもひどい・・・」
と言いながらフィオはシートひき始めた。
何をするかと思いきや、
「目が痛くて何も出来ないから、回復するまでお弁当食べてます」
だと。てめぇ!ここは戦場だぞぉ!

パァンバン。ドォン。ドカーン。
「エリ、本当に頼む。出来る限りの援護はするし、お前なら絶対できるから」
・・・まぁ、元より後に引けない状況だからな。
しょうがないと言えばしょうがない・・・
ポス
ん?どうしたフィオ。
「エリさんは頑張るので、おにぎりをあげます」
ああ、ダメだこいつ。後で殺そう。
おにぎりは貰ったけどな。
「そのおにぎりには、あの氏のアレが入ってますよー」
・・・30叩きぐらいにしといてやろう。

私の仕事は、
簡単と言えば簡単か。
兵士達の目を盗んで後ろにまわり込む事だ。
マルコ達は囮になるからな。
言っちまえば奴らは比較的安全な方だって事だ。
簡単とは言ったが、見つかったら即殺される奴らのすぐ後ろにまわり込むって事を
考えた事はあるか?

バン。バン。
弱肉強食とはよく言ったもんで、
この場合、とりあえず”強”の私は傷1つ負わない訳だが。
その私の良状態とは引き換えに、と言うのが近い表現かな。
だからと言って、やらなければこっちがやられる訳だ。
弱肉強食とはよく言ったもんで。

少女がいる。
ほらな、戦争なんてこんなもんだ。
誰でもいいんだよ。戦えりゃあ。
うちのメガネを例に出せば、分かり易いか?

少女は命乞いをしてきた。
だが残念だな。
私の知り合いだなんていうのは、
私にとってはこれ以上無い程度の低い嘘だ。
更に加えて側にいる兵士と必至に話を合わせるのがお粗末すぎる。
そんなに嫌なら、せめて楽にやってやろうか。

少なくとも、こんなすさんだ世からはおさらばできるよ。
そう思って私は引金を引いた。

バァン

少女はいなかった。
一瞬、まぶしくなった。
もしかしたら、自分がやられたのかもと思った。
だが、駆け付けてきたマルコに思いっきり殴られて、
痛かったのでとりあえず大丈夫そうだというのを理解した。

「バカかお前!一般人かどうかなんて一目見て分かるだろうが!」
すごい形相だったので、呆然とした。
「あの子はどうした!」
消えた、とだけ言った。
「消えた?逃げたって事か?なら、いいんだが」

マルコは前大戦で、少女に会った事があるらしい。
マルコは一般人の彼女に会ったらしい。
しまった。
いろいろと気がたつことが多かったので、冷静になれなかったのか?
冷静になれなかったら、一般人を殺していいのか?
ところで彼女は逃げたんじゃなくて、消えたんだが。
消えたってどういう事だ。
もしかして・・・
私は、最悪の想像をしてしまう。

「よう、済んだか?お疲れ、バカエリ」
「ターマ、あのな。お前、本っ当にタイミング悪いぞ」
「何?何かあったか?バッ・・・マルコよ」
「お前っ今バカマルコっつおうとしたろ!」
「癖って、怖いねー」
「自覚してるなら、エリの事も普通に呼べばいいだろ!」

ターマに、あった事を話すマルコ。
「じゃ、ロリエリか?」
バン、バン
「ほら、ターマがあんまりからかうからエリもついに怒っただろ」

そのつもりだった。
私の撃った銃弾はターマの遠く横の木にめり込んだ。
言っては何だが、もちろんいつも通り狙ったつもりだった。
マルコが異変に気付いたようだった。

手が震える。
武器が持てない。

戦えない。


手の震えが止まる事はなかった。
結局、あの後、私抜きで何とか3人で頑張っていた。
私としては、その3人に付いて行くばかりで、情けない。

お前、頑張りすぎたんだよ。休めって事だろ?
ターマが言っていたが、いくら休んだ所で、どうなる訳でもなかった。

島にやってきた。
バカンスじゃない。任務だ。
内容はひどくコッケイな話だ。
でかい虫が出て珍騒動。普通に考えりゃ、信じられん。
でも実際それで被害が出てるので、信じないわけにはいかず、
こりゃ世も末か?

ターマとフィオがうざいぞ。
これでもかという程つきまとってくんなよ。

なんでも、
フィオの言い分は、
私が腹減った時に誰が食べさせてあげるんですかという。
お前の認識能力分からねーよ。
飯ぐらい自分で食わせろ!
ターマはというと、
私が武器を持てない事を面白がってるだけだ。
消えろー!

少女を発見した。
何故こんなとこにいるんだって事を考える暇はなかった。
珍妙な大きなカニに襲われそうになっていたから。

瞬間、私は走り出した。
ちょっと距離があるな。
頼む、間に合ってくれ。

殺してしまいそうだったあの少女。
今度は助けるんだ。

やばい、少女がカニに攻撃されてしまった。
何とか避けたようで致命傷ではなさそうだが
腕から血が出ているようだ。
腰も抜かしてしまってるようだ。
次避けるのは無いだろう。
それまでに間に合え。

しかし、すかさずカニは2撃目を振るおうとしている。
大きなはさみを振り上げる。
ちょっと待て待て。まだ距離がある。
やばい!

パン
後ろから銃声が聞こえた。マルコだ。
注意をひきつけてくれたらしい。
カニの動きが一瞬止まった。

バゴォッ!

よっしゃあ!
あれだな、名言を言ってやろう。
人間、その気になれば
カニの甲羅だって蹴破れる。
・・・ダセぇ。ターマにだけは言わないでおこう。

少女はナンシーというらしい。自己紹介されたのでこっちからもしてみた。
何やってんだ、と言いながらマルコがやってきた。
下手な芝居だな。
自分は何の関与もしてませんってつもりか?

柄にもなくちょっと込み上げてくるものがあったので、
バイバイと言って私はそうそうに立ち去った。
マルコも後からついてくる。
あれ、エリなにニヤついてんだよと言われた時は焦ったな。
やべえ顔に出てるらしい。ターマには見せられん!
もし見られた時の事を考えると、ああ恐ろしや恐ろしや。

とりあえず何とか平静を取り戻して、フィオ達のとこに戻ったが、
あれ?エリお前武器持ててんじゃんと口を揃えて言われた。
うるさいな。
フィオとターマはいちいちうるさいな。

あんまり素っ気無かったから、
軽い文書を密かにナンシーの懐に忍ばせたけど、
ちゃんと読んでくれるかしら。

そう言えばナンシーの懐に何入れたんだとマルコに聞かれた。
バレバレかよ。
フィオとターマという奴らには気をつけろって書いたと言ったら、
ああそう、容赦ないなお前と言われた。
信じてるよこいつ。

本当は、手紙だとか言わずに、
実際にいつの日か、

また会いましょう

またね
<おわり>



「ん?なにこの感触」

何だか、胸の辺りがカサカサする。
いや、むしろカサカサいってる。

「ちょっと待て待て待て。これってもしかして胸がおかしくなる変な病気? か、勘弁してくれーって、ああなんだ、ただの手紙が胸ポケットに入ってただけだ」

私からもありがとう。いつかまたね。

「なんだこの手紙。差出人の名前も書いてないし。いつからポケットに入ってたんだろう」

コンコン
ドアをノックする音が聞こえる。

「誰か来た。どうぞ。でもこんな病室に一体誰だ?母さんはさっき帰ったばっかだし」

ガチャ

「どちら様?ってどわあああああああ!」

「交通事故が小さい記事ではあったけど新聞に載ってたからもしやと思ったけど」

「あ、あなた様わぁーーー!」

「あれから何年も経つけど、もしかして覚えてくれてる?私、エリって言うんだけど」

経て
<おわり>


<あとがき>タスラグより

”バイバイ”と違う感じのもの。
これと”バイバイ”とを合わせて、2つで”経て”という1セットになっております。

”バイバイ”は自分が以前に掲載させてもらってた某サイトでの、
最後の作品にするつもりで作ったものでした。
しかしサイトが閉鎖、その後ここで引き続き掲載させていただく事になり、
急遽この”またね”を作らせていただきました。
なのでいろいろと調整できてません。ガックシきて下さい。

1番最初が自分の他作品”殺せ”から引き続いている感じがするのは、
単なる遊び心で深い意味はないです。

2003年9月18日




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