「畜生、どんな攻撃も何事も無いようにスルリとよけて行きやがる」モーデン軍兵士達が正規軍の「ある奴」について議論(?)をしている。
「あいつを何とか打ち負かす方法は無いものか・・・」
「俺達全員でつっかかって行っても所詮二の舞になるだけ」
「正面きっての戦は勝てる見込みが全くないか。ならば」
「卑怯だが横から後ろから攻めるしか無いって事か」
「人質を取ればいいだろう」
「で?その肝心の人質は誰にする気だ?」
「あの・・・メガネかけた女にしよう。一番弱そうだ」
「『一番弱そうだ』ね・・・」
モーデン兵達、自分で情けないなと思った。だがやはり正規軍に打ち勝つためには弱い所から潰して行くしかないということか。正規軍とはそれだけモーデン兵達にとって手の届かない所にいるということか。
「そうと決まれば早速実行だ!標的が現れるまで隠れて待つぞ」
一方、場所は変わって。
「げぇ・・・本当にこんな密林の中にモーデン野郎の基地があんのかよ・・・」
「文句言うなって、ターマ。基地があるんなら破壊するのみだ。どうせ奴の企みはロクでもないんだからな」
「へーへ〜・・・で、どう攻める気だ?マルコ」
「二人一組で二方から攻めようと思う」
「分かった。じゃ行こうぜーマルコ。エリとフィオも達者で・・・」
「いや、組を組むのは俺達PF隊とスパローズ隊それぞれ一人ずつとで、だ」
それを聞いてエリが口をはさむ。
「何でよ。同僚同士の方が息は合うじゃない」
「確かにそうだが、俺達が手を組むようになってあまり間も経ってないから、どうせならお互いの力量をしっかり確認しといた方がいいと思ってな・・・」
それを聞いてたターマが口挟む。
「それとも同僚同士でないと怖くてできませーんってか?」
「なんですって・・・」
「俺にゃそう言ってるように聞こえるがなぁ」
「つまんないシャレを言ってくれるわ。どうやら力無い者ほど粋がるってのは本当のようね、フンッ」
「そうだな。力の無いお前が粋がって頑張ってるなぁ」
「・・・勝負なさい・・・」
「やってやろうじゃねーか」
「スコア勝負よ!負けた方は明日の飯代全部おごり!」
「面白ぇ!そうと決まれば早速勝ちに向かってダーーーッシュ!」
「あっセコっ!待ちやがれーーーー」
ターマとエリは行ってしまった。
「って事は俺とフィオと行くわけか。じゃあ行くぞフィオ」
「了解マルコさん!」
続いて二人も密林の中へ。中にはモーデン兵達が待ち構えている。
「おい!この先でメガネ女を発見した!もうすぐここを通るみたいだ」
「そうかよし。じゃあ後は『奴』がどこにいるかだな」
「それが聞いてくれ。奴も一緒に行動してたんだ」
「おおっ!何と運がいい。探す手間が省けたってか・・・ん?」
モーデン兵は大変な事に気がついた。
「ちょっと待て・・・それはつまり単独行動じゃないって事じゃないか。奴に気付かれずにメガネ女を捕まえるのって・・・」
「それはものすごい難しくないか?大丈夫なのかこの作戦は」
「畜生。あのメガネ女捕まえるだけでも2、3人の犠牲はしょうがないと思ってたのに・・・」
「おい・・・俺達ゃそんなに弱いのかよ」
「とりあえず・・・今即興で思いついた方法でおびき出してみよう・・・」
「上手くいくのか?・・・すっげー不安だ」
マルコとフィオがやって来る。
「どうやら敵はいつもより比較的少なめのようだな」
「このまま進んで早く任務終了させましょう」
カラン
「あれっ?私のメガネ。何であんな所に?」
フィオはそのどこからともなく落ちたメガネの方に行った。でも、フィオはメガネちゃんとかけている。どうやらメガネかけてるのを忘れてしまっている模様です。灯台下暗し?
「いつの間に落としたんだろ?」
そう言ってメガネを拾った。
「えっ・・・おい。さっき思いついた方法って?」
モーデン兵が「まさか」と言わんような目つきで問う。
「うんそう。こうやってメガネでおびきよせるんだけど・・・」
「鳥じゃあるまいし。ってかそれ以前の問題だ!俺は恥ずかしいよ」
「いやちょっと待て。もしかして脈あり?」
試しにもう一個、メガネを放る。
「あっまたメガネが・・・」
と、またフィオはその落ちたメガネの方に向かって行く。
「こんな事を実際やろうって奴もだが、その罠に引っ掛る奴も奴だ」
だが上手くいってるのも事実。
「お〜〜い、フィオー。どこ行く気だ」
「すいませんマルコさん。ちょっと待ってて下さい、取り込んでます」
「・・・?」
カラン、トコトコ、カラン、トコトコ、カラン、トコトコ・・・
結局、マルコとフィオは一時はぐれた事になった。
「お・・・オレの作戦がこんなに上手くいくなんて・・・」
「おい、あのメガネ女、何かあのおびき出し用のメガネの前で悩んでるみたいだぞ」
フィオはその数あるメガネの中から「どれが私のだろう」とか悩んでた。自分のかけているメガネが貴女のです。
「今が好機だろ!」
「よし、捕まえろーー」
フィオの回りの草木の影から十数人の兵士が襲いかかる。
「きゃあっ!」
不意をつかれたのか、あっけなく捕まってしまった。
「やった・・・捕まえれた・・・一人の犠牲者も出さずに・・・」
「もうそれ以上言うなって・・・」
「よしっそいつは殺すなよ。あくまでターゲットは・・・」
『奴だ』
「その『奴』ってのは俺の事かい?」
「マっマルコっ!何でこんな早く・・・」
「フィオの悲鳴とお前等の声がして何も無いって考える方がおかしいだろ」
「だが遅せぇよ。こっちには人質がいる。変な行動とったら両方とも殺す」
「マルコさぁん・・・」
「フィオ・・・お〜ま〜え〜は〜・・・まぁいいか、後回しだ」
「おい何無視してやがる。この人数だ。流石にお前とて何も出来ないハズだ」
「・・・人質とは卑怯な真似をするもんだ。おい、こんな言葉知ってるか」
「?」
「目には目を、歯には歯を」
「何言ってやがる」
「そっちが卑怯な方法とるんならこっちもとるまでだってことだ」
「うるせぇ!この状況で何が出来る!みんなやっちまえ!」
兵士が皆、マルコに銃を向けた瞬間、マルコが
「たった今、お前等の命を人質にとった。変な真似すると人質が危ないぜ」
十分であった。全く動けなくなった者、逃げ出す者。一瞬で敵はいなくなった。それぐらいの迫力と信憑性が彼の言葉にはあった。当然フィオも無事釈放。
「ん。じゃあ行くか。フィオ」
「す、すごい・・・あの、このままほっといてもいいんですか?」
「もう戦意は失ってる。これ以上手を下さなくてもいいさ」
「分かりました・・・」
「それよりな・・・」
「何ですかぁ?」
「お前の天然は危険すぎる!あんな罠にかかるとはお前は天才か!」
「そんなに誉めないで下さい。天才だなんて」
「えぇ〜〜・・・もういいよ、天然」
目的の基地まで辿り着いた二人、しかし、基地はもうボロボロになってた。
「そう言えばターマ達、暴走してたよなぁ。あいつらはどこにいるんだ?」
「あ、あそこにいますよぉ。でも何かケンカしてるみたい」
「おい、何で二人ともちょうど50万点と一緒のスコアなんだよ」
「知らないわよ。そっちがズルしたんじゃないの」
「その言葉、そっくり返してやらぁ」
「負け惜しみ言ってんじゃないわよ!」
「誰が負け惜しみだこらぁ!」
どうやら二人のスコアが一緒で勝負になってないらしい。それもそのはず、片方がもうやっつけてしまってる敵にも関わらず、もう片方が更に1発殴ってるからであった。よって二人とも倒した敵の数(正確に言うと手を下した敵の数)は見事に同じ。
「おいおい、ケンカすんなって」
「おうマルコ、遅かったな」
「ちょっと聞いてよ。こいつズルしたのよ」
「お前がだろ!」
『なんだとぉ〜〜〜』
「おいおい、スコアなんてどうでもいいじゃないか。それよりここ破壊したのはお前等だろ、そっちのがすごいって」
『そう言うお前は何点だーーーー!』
「んー俺は・・・100万とちょっと行ってる」
「なっ!す、すげぇ・・・」
「どうやったらそんなに行くわけよ」
「俺達の負けだ。明日おごらせてもらうよ・・・」
「何だそりゃ」
ターマとエリの敗北宣言。マルコは二人に打ち勝った。意識してないけど。
そこへフィオが
「じゃあとりあえず今は私のおごりです。はい(さっきの)メガネ!」
それはおごりと言えるのか?
終わり
<あとがき>
前回の僕の作品「対抗戦」にてマルコがあまりにも可哀想な立場だったので(それだけが理由ではないですけれど)書きました。でも本来のマルコさんの立ち位置ってここらへんだなーと思うのです。隊長だし。
でももっと可哀想なのはモーデン兵です。自分から弱い事を認めてしまっています。
ちなみにこの話の中に死者は一人も出てません。ターマ、エリ班はスコアを狙うため近接攻撃、その近接攻撃も「殴り」というものです(ちょっとゲームとは違ってますが)。マルコ、フィオ班も殺しは犯してないって事で、実は「死者を出さない」っていうのが隠された題だったりしますが・・・気付かないですね。気付くはずがありません。探せばもう一つ隠された話がある?
マルコが何故あれだけのスコアを稼いだのかは謎です。そういう事にしといて下さい勘弁して下さい・・・死。
ここまで読んで下さった皆さん、お疲れ様でした。それではまた楽しいネット生活(や現実生活)にお戻り下さい。
ところでフィオってオチに使いやすいっすね(今回限り?)
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